✳️冷え・むくみを改善するために

🟠鍼灸・マッサージでできること

 

1. 冷え・むくみとは

冷えやむくみは、血液・リンパ液などの体液循環が滞ることで生じる症状です。冷えは単に「身体が冷たい」という感覚だけでなく、「末梢循環が低下」「気の巡りが停滞」「代謝が落ちて体温が維持できない」などを背景にする場合があります。むくみは体内の水分代謝がうまくいかず、組織と組織の間に余分な水分が溜まる状態です。

 

2. 東洋医学的な捉え方

東洋医学では、冷え・むくみは以下のような体質や内臓機能のバランスの乱れによって起こると考えられます。

原因タイプ(身体の状態)  良く見られる特徴

気虚(ききょ):エネルギー(気)の巡りが弱く、血を巡らせる力が足りない・・・手足が冷える・疲れやすい・むくみやすい

陽虚(ようきょ):身体を温める“陽気”が不足している状態,。・・・慢性的な冷え・寒がり・下半身の冷えが強い

血虚(けっきょ):血自体が不足しているため、温め・栄養・潤いが足りない・・・顔色が白い・めまい・乾燥肌・手足の冷え

瘀血(おけつ):血流が停滞・滞りがある状態 冷えの部位が一定・“刺すような”痛み・黒ずみ・むくみ

水滞(すいたい):水(体液)の巡りが悪く溜まっている状態・・・むくみ・重だるさ・頭重感・下半身が特にむくむ

 

3. 鍼灸でできること

① 血流・気の巡りを整える

例えば、鍼刺激によって末梢の血流や微小血管の循環が改善されたという報告があります。たとえば、末梢・腸管・網膜血管に対して鍼刺激によって血流変化が認められた研究があります。 

また、微小循環・血液粘度(血が流れやすいかどうか)に関する最近のレビューでも、鍼治療が微小血管の血流改善に関連する可能性が示されています。 

そのため手足や下半身など「冷え感」の強い部位に対して、巡りを促す鍼灸刺激が有効と考えられます。

 

② 内臓(脾・腎)を整える

東洋医学的な観点では、「脾」が消化・吸収・水分代謝を、「腎」が生命力・温める力(陽気)を司るとされます。これらの働きを鍼灸で調整することで、冷え・むくみの根本に向き合います。

 

③ 自律神経のバランスを整える

冷え・むくみには自律神経の乱れ(交感神経過剰・副交感神経低下)が関与することがあります。鍼灸によって交感神経の緊張が緩み、末梢血管が拡張しやすくなるという知見もあります。たとえば腱・アキレス腱に対する鍼/指圧刺激で血液量が増加したという報告があります。

 

4. マッサージ・指圧でできること

筋肉の緊張をゆるめ、血行を促す:筋・筋膜の張りを緩和することで末梢まで血流が行き届きやすくなり、冷え感軽減・むくみ改善につながります。たとえば、マッサージが運動後の血流改善・血管機能改善をもたらしたという研究があります。 

リンパ・静脈還流の促進:特に下肢むくみに対して、ふくらはぎ・足首周りのマッサージや指圧により「滞り」の除去をサポートできます。

代謝アップ・冷え予防:筋肉刺激と血流改善により、体温維持・冷えにくい体づくりをサポートします。

 

5. 鍼灸・マッサージによる期待される効果

手足・下半身の冷え感の軽減

むくみ・だるさの解消

体温の安定・代謝改善

自律神経の安定・睡眠の質改善

生理痛・月経不順の緩和(血流改善による)など

 

6. 注意点・セルフケアの提案

鍼灸・マッサージで体の巡りを整えると同時に、以下のセルフケアも併せて行うと効果的です。

足首・お腹周りを冷やさないようにする(レッグウォーマー、腹巻きなど)

 

夕方に軽いストレッチ・足湯などを取り入れる

 

塩分・甘味・冷たい飲食の摂りすぎに注意し、温かい飲食・軽い運動を心掛ける

 

睡眠をしっかりとることで回復力を高める

 

7. まとめ

冷え・むくみは「体の巡り」が滞っているサインと捉えられます。

鍼灸・マッサージでは、体の深部から「気・血・水」の流れを整え、内側から温まる体づくりをサポートします。

一時的な改善だけでなく、根本的な体質改善を目指す方にも有効です。

 

 

 

🔹参考文献・出典

本ページの内容は、最新の医学的知見および公的ガイドラインに基づき作成しています。

鍼灸マッサージによる冷え・むくみへの対応範囲・限界について、以下の文献を参考にしています。

📚参考文献(国内研究より)

1. 木村研一 他.鍼灸治療が末梢循環に及ぼす影響とその作用機序について.『自律神経』56(3):146-151,2019.

 → 鍼灸刺激による局所の血流改善メカニズムを報告。

 出典: J-STAGE

2. 明治鍼灸大学研究紀要(2006).鍼灸と末梢循環について.

 → 鍼刺激が末梢血流に与える影響を基礎的に検討。

 出典: 明治大学鍼灸学部リポジトリ

3. 松浦悠人(2022).美容鍼灸に関する研究論文レビュー.『Integrative Medicine Japan』15(1):26-34.

 → 美容鍼灸において「むくみの改善」に関する報告を紹介。

 出典: J-STAGE

4. 厚生労働省(2020).日本鍼灸エビデンスレポート(統合医療に係る情報発信等推進事業).

 → 国内臨床研究を体系的に整理した報告書。

 出典: 厚生労働省 統合医療情報サイトEJIM

 ※こちらの情報は、日本鍼灸師会・日本東洋医学会・日本生理人類学会などの公的ガイドラインを参考に作成しています。

医療機関での診断・治療を妨げるものではなく、鍼灸マッサージによる補完的ケアを目的としています。